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第22回

作品賞

国際教養大学図書館棟

建物名称 国際教養大学図書館棟
所在地 秋田県秋田市雄和椿川字奥椿田岱193-2
建築主 国際教養大学
設計者 仙田満+環境デザイン・コスモス共同企業体
施工者 大木・沢木・足利・石郷岡・互大異業種共同企業体
建物規模 建築面積 2433m2 延床面積 4055m2 階数   地上2階 最高高さ 12.98m
主要用途 大学施設(図書館 教室)
主要構造 木造+RC造+S造

国際教養大学は、国際社会と地域社会に貢献できる人材養成を目的に2004年に創設された公立大学であり、24時間オープンの図書館を有する図書館棟はその中枢として建設された。将来国際的な活躍が期待される国内外の学生達に、日本の細やかで優れた技術や精神を感じてもらえることを願いつつ、構造設計監理に取り組んだ。

構造計画にける主要な条件は、プロポーザル要項としての秋田県産木材の多用、図書館としての遮音性と水密性、広大なフラットルーフに必要とされる150cmの滞雪性能、ルーフ段差・外周部の水平スリット状ハイサイドライトの開放性、半円筒形大空間のバランスであった。木材は、中目丸太(末口径20〜30cm)の有効利用を考え、秋田杉の径5〜8寸、長さ4〜8m程度の芯持材を主要材にした。

これらの与件に対し、まず外周を半円筒形RC壁とし、その中に秋田杉製材による放射状二重合成梁を入れ子状に配置した。二重合成梁は、叉首(さす)梁と重ね透かし梁という適応スパンの異なる2種類の合成梁を縦に重ねたもので、大荷重・長スパンに対しても小径木の使用を可能としつつ軽快な架構を実現できるものとして考案した。二重合成梁は接合箇所が多くなるため、製作金物に頼るとコストアップや美観を害するなどの課題があったが、日本の伝統的な大工技術である継手・仕口を用いてこれを解決し、ローコストかつ美しいディテールを心がけた。放射梁が集まってくる円弧中心部では、混雑を解消しつつ梁スパンを短縮する目的で、中心から2.5m離れた位置に鉄骨円弧梁を配置し、これを基礎レベルの円弧中心から傾けて建てた6本の300φ杉柱で支持した。ルーフ段差・外周部では鉄骨フィーレンデール梁と片持ち柱を配置しすることでハイサイドライトの開放性を獲得し、ルーフ段差部では6本の360角杉柱でフィーレンデール梁を支持した。以上の構造のみでは積雪時のスラストによる変形が大きくなるため、屋根面に構造用合板を貼って構面をつくることで立体的に安定させた。

このような製材を用いた大架構では、木材の乾燥収縮による応力集中や有害な変形が懸念されるため、自己収縮ひずみを考慮した解析を行い、収縮に追従できる架構をスタディした。その際、5%の含水率変動を想定して材軸方向の収縮率を0.1%として解析した。更に木材選定と乾燥を慎重に行うとともに、将来の変形に備えて調整可能な機構を各所に設け、数年ごとの定期検査実施を計画した。

以上のように、秋田杉と鉄という素材を用い、伝統技術を主とした細かい普遍的な技術の積み重ねでハイブリッド構造を構築し、これによって奥深く聖らかな構造空間を創出した。

山田 憲明

/ 生年月日 /
1973年1月16日
/ 出身地 /
東京都生まれ
/ 出身校 /
京都大学工学部建築学科卒業
/ 職歴 /
1997年 株式会社増田建築構造事務所入社
現在 同 チーフエンジニア
/ 主要作品 /
レストランアーティチョーク
勝山館跡ガイダンス施設
大洲城天守
西袋中学校体育館
仁井田中学校体育館
東北大学大学院環境科学研究科エコラボ
緑の詩保育園

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