JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第22回
新人賞
JFEケミカル・ケミカル研究所
建物名称 | JFEケミカル・ケミカル研究所 |
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所在地 | 千葉県千葉市中央区 |
建築主 | JFEケミカル |
設計者 | 木下昌大建築設計事務所 |
施工者 | 清水建設 |
建物規模 | 建築面積:約1,300㎡ 延床面積:約3,100㎡ 階 数 :地上3階 最高高さ:14.46m |
主要用途 | 研究所 |
主要構造 | 鉄骨造 |
企業の研究拠点並びに社会に対する情報発信拠点として計画された建物である。計画上は実験室などオープンスペースを一直線上に並べ、1階から3階、3階から1階へと渦を巻くようにレイアウトし、2階中間領域に機密性の高いクローズドスペースを挟み込んだ構成である。
この中間領域(ボイドスペース)は、設備計画的にも重要な領域である。延べ床面積のおよそ半分を占める実験室群が要求する大量の吸排気は、2階ボイドスペース側に吸気スペースを確保することで解決し、外壁へのガラリやベントキャップの露出を避けている。
渦を巻く筒状空間とその間に挟まれた中間階、この構成を如何に構造的にサポートするか、それが構造計画上のポイントであった。
意匠・設備計画上から要求された2階ボイドスペースは、当初は一部上階を支持する細い支持柱のみが点在する完全な透過空間であった。しかし鉛直力に対してはともかく、地震等の水平力に対しては、コの字プランを2か所の縦動線のみで支持することはバランスが悪く、経済的にも不経済となることが考えられた。このため機密性の高い執務空間へのアプローチとして用意されていたプラン中央の縦動線を、用途的にも閉じた形態となることを考慮して、先の2つの縦動線と合わせて耐震コアとして計画した。これらコア配置は平面的にはほぼ正三角形のレイアウトを取っており、建物全体をバランスよく支持することが可能であった。なおエントランスから3階へと続く大階段は、付近に吹き抜けが多く、外壁のみの耐震要素では効率よく水平力を処理することが難しかったこともあり、3階床を支持する耐震構面として計画した。
横力に対するコアを3か所に集約することで、2階は180角のBox柱がおよそ12m×9mスパンで林立した文字通りボイドスペースを構成する事が可能となった。またプラン中央に設けたコアは外壁線から3.5m以上引き、先に述べた設備スペースをコア周りにも創出し、良好な実験環境を下階へと提供している。1階屋上の吸気口を隠すパラペットは、奥まったコアの存在を隠蔽し、挟まれた中間領域を一段と強調するものとなった。
建物外周の斜め柱は、ファサードを支持する2次部材であると同時に、鉛直力・水平力を支持する主要構造体であり、各階の箱としての1次剛性を高め、耐震コアへの安定した水平力の伝達を可能にしている。また内部支持柱より2.5~4.0m張り出した3階床外周の変位制御にもフィーレンデール的挙動により寄与している。
森部 康司
/ 生年月日 /
1976年4月11日
/ 出身地 /
愛知県
/ 出身校 /
名古屋大学大学院 工学研究科 建築学専攻 修士課程修了
/ 主要職歴 /
2001年 ㈱オーク構造設計入社
2006年 昭和女子大学 生活科学部生活環境学科(現環境デザイン学科) 専任講師
/ 主要作品 /
地層の家、象の鼻パーク/テラス、北村学園こだま幼稚園子育て支援センター