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第26回

作品賞

あべのハルカス

建物名称 あべのハルカス
所在地 大阪市阿倍野区
建築主 近畿日本鉄道株式会社
設計監理 株式会社竹中工務店
施工 竹中工務店、奥村組、大林組、大日本土木、錢高組共同企業体
建物規模 建築面積 約 6,100m2(タワー部分) 延床面積 約 212,000m2(タワー部分) 階数 地下5階・地上60階 最高高さ 300m
主要用途 駅、百貨店、オフィス、ホテル、美術館、展望台
主要構造 鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造

1.想定外を想定する
2011年の東北地方太平洋沖地震以降、想定外のレベルの巨大地震や台風も想定し、それに対するリスクを事業主・設計者と社会が共有し減災に繋がるように対策を講じておくことが重視され始めている。あべのハルカスの設計は当初から想定外のレベルの巨大地震や台風に対しても詳細な検討を行い、レベル2を上回る巨大地震に対しては小破、これまで発生したこと想定外というべき極大地震に対しても継続使用が可能な被害に留めることができるよう設計している。

2.優れた空力性能
高さ300mクラスの超高層建物では空力特性の良否が耐風設計上非常に重要である。建物に強風が当たると建物風下側にカルマン渦が発生し、建物を風と直交方向に揺らせる。あべのハルカスのようなセットバックタイプは、直方体のボリュームの場合に比べ、カルマン渦の影響が小さく抑えられ、建物を転倒させようとする力を効率的に軽減する優れた空力性能を持つ建物形状である。

3.イノベーティブな架構計画
あべのハルカスでは想定外の地震や台風に対する安全性の確保とフレキシブルな平面の両立を目指した。波形鋼板壁やブレースを用いたスチール系コアと超高強度CFT柱による外周架構をトラス階で繋ぐアウトリガーシステムにより、22m×72mの眺望のよいフレキシビリティに優れたワークプレイスを実現した。コア部分の短辺方向は軽快なブレースとすることで、光が建物の奥深くまで透過するイノベーティブな架構を作り上げた。

4.効果的なエネルギー吸収機構
あべのハルカスでは強固な架構に加えて配置したエネルギーを吸収する機構が減衰性能を向上させ、地震や強風時の揺れを抑え、高いレベルの安全・安心を実現している。せん断変形が大きく制振ダンパーがよく効く低層部には、オイルダンパーと回転摩擦ダンパーといった2種類の制振ダンパー計307基を組み合わせて集中的に配置している。中層部には波形鋼板壁を225箇所に、高層部には心棒ダンパーを3か所に設置している。

5.安全安心のデザイン
あべのハルカスでは、建物の安全だけでなく、家具・什器の滑走や転倒等建物ユーザーへの影響や、強風時の揺れによる人命に影響しない居住性の評価と改善なども安心につながる課題として取り組み、一般の超高層建物に比べてハイグレードの安全・ 安心を提供することができ、永く多くの人に使われ続ける超高層集密都市の実現につなげることができた。

平川 恭章

/ 生年月日 /
1963年8月29日(大阪府生まれ)
/ 出身校 /
京都大学大学院
工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
1988年 株式会社竹中工務店 入社
/ 主要作品 /
三洋大日集合住宅
福島1丁目B街区集合住宅
名古屋国際高校
日亜化学辰巳TS7棟
もりのみやキューズモールBASE

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