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第26回

新人賞

羽田クロノゲート 地域貢献エリア『和の里』施設群

建物名称 羽田クロノゲート/ 地域貢献エリア『和の里』施設群
所在地 東京都大田区羽田旭町11-1
建築主 ヤマトホールディングス株式会社/ヤマト運輸株式会社
設計者 株式会社日建設計
施工者 鹿島建設株式会社
建物規模 (代表として、ヤマトフォーラムについて記述) 建築面積 約 1800.00m2 階数 2階 建物高さ 13.5m
主要構造 鉄筋コンクリート造、 一部鉄骨造(屋根:フープ式張弦梁構造)

羽田クロノゲートは、羽田空港に隣接し、陸海空の要所である好立地に計画したヤマトグループ最大の物流ターミナルである。「和の里」とは、この敷地の南側に広がっている住宅地と物流ターミナルとの間に計画した、地域住民のための約240m×100m、24時間開放の地域住民のための提供公園・施設のことである。

この和の里に計画したヤマトフォーラム、受付棟、託児所、カフェベーカリー、リングデッキの4つの施設と1つの歩道橋における設計で新人賞をいただいた。特徴的なのは、すべて円形プランとしたこと、そして棟の多くに逆円錐形状を採用したことである。紙面の都合上、このうち最大の施設であるヤマトフォーラムについて、作品概要を以下に述べる。

ヤマトフォーラムで難しかったのは、内外観ともにコンクリート現しの表現を意匠が要望していたことであり、施工法を具体的にイメージしながらスタディを行った。その結果、現場打ちのコンクリートでは望むような外観・品質は得られないと判断し、プレキャスト壁(以下、PCa壁)の圧着工法という大方針をまず決定した。24分割したPCa壁の2階とR階レベルの梁に配線したPC鋼より線を全体緊張し、ついで壁や柱脚のジョイントコンクリートを打設し、逆円錐形状の下部構造を一体化する工法である。

次に屋根鉄骨であるが、約60mのロングスパンに対する合理的解決策として、2段のフープ状テンションリングと放射方向のテンション材のハイブリッド・システムであるフープ式張弦梁構造を採用した。本構造を採用した理由は下記の2点である。
・建物高さを抑えて圧迫感を軽減しつつ、競技のための有効高さが確保できること。
・自碇式の特徴によりスラスト力が発生せず、下部構造に過度な負担が生じないこと。
これらの構造種別と並行して検討したのは、その施工方法であった。屋根鉄骨は、不安定な上空のベントの上で重量鉄骨を架設するのではなく、なるべく安定した地表近くで地組を行った後に、所定の高さまで掲重する施工とすべきと思われた。逆円錐形状で足元よりも上空で跳ね出してしまう部分のベントの支保の難度が高いのと、構造体のフープ式張弦梁構造をそのまま現す意匠としており、美観上高い施工精度が求められたためである。試行錯誤の末、まずまっすぐに立てたPCa壁を外側に倒すことで、鉄骨屋根を引き上げるメカニズムを施工利用した構造計画を考え、これをアップリフト構法と名付けた。本構法は、上棟後すぐに屋根工事と屋内工事を二段同時施工ができるので工程上も合理的だと考え、設計図に施工要領図として図示した。

福島 孝志

/ 生年月日 /
1978年12月10日(埼玉県生まれ)
/ 出身校 /
日本大学大学院
理工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2005年 株式会社日建設計構造設計室 入社
/ 主要作品 /
渋谷ヒカリエ
厚木ゲートウェイ
八十二銀行研修所
ドトール名古屋栄

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