JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第27回
奨励賞
江の島 湘南港ヨットハウス
建物名称 | 江の島 湘南港ヨットハウス |
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所在地 | 神奈川県藤沢市江の島 1-12-2 |
建築主 | 神奈川県 |
設計者 | ヘルム+オンデザインパートナーズ |
施工者 | 谷津建設 |
建物規模 | 建築面積 2,052m² 延床面積 3,399m² 階数 地上2階 建物高さ 12m |
主要用途 | 港湾管理事務所 |
主要構造 | RC 造(一部鉄骨造) |
波打つ屋根が特徴的な「みんな」に開かれたヨットハウスである。江の島の魅力あふれる環境をそのまま建物に取り込むことを目指した。1階吹き抜けから2階イベントホールは大屋根を介して一体的な内部空間となっており、2階の外側には海を見晴らす広いテラスが巡っている。事務機能は1階に集約し、機能的・効率的な配置としている。
江の島の自然光を取り込むために設けた屋根スリットは、海からもその形が見えることに配慮しつつ、敷地に吹く卓越風を遮らない向きとし、誘因効果による換気にも期待する配置としている。これら7つのスリットは自然光シミュレーションにより照度分布を確認して位置を調整した。
屋根スリットは両端に鉄骨柱を設けて構造梁(「オープンビーム」と命名)としても機能させている。これにより、自由な平面計画の2階と、整形なグリッドで構成している1階を貫通する合理的な柱配置が可能となった。厚さ300mmの大屋根は塩害対策のために高強度コンクリートとし、オープンビームは上下のコンクリート内にφ70の丸鋼を挿入し、開口部には鉄骨フラットバーを束材として設けている。
屋根のジオメトリーは不連続面のない滑らか曲面とするために、建築家が模型スタディーから割り出した各点の高さに合わせて、仮想鉄板モデルを解析的に強制変形させて生成した。面外応力を減らすための構造最適化による微修正、水勾配の検証を経て、最終形状を決定した。
建物の対角線上に配した二つのコンパクトな耐震コアにより 耐震性能を確保しており、鉄骨柱は鉛直荷重のみの負担としている。柱頭廻りのスラブ内に逆T型ブラケットおよびせん断補強筋によりパンチングシア耐力を確保し、自由曲面にきれいになじむディテールを実現している。
現場では、三角メッシュによるFEM構造モデルから生成した、1枚の滑らかなサーフェイスを「ベースモデル」とし、施工者・型枠製作会社・鉄骨ファブで共有化し、高い精度で屋根の施工を実現した。
結果、「この場所だからこそできる、この場所でしかできない」建築が建ち上がった。
徳渕 正毅
/ 生年月日 /
1969年9月21日(埼玉県生まれ)
/ 出身校 /
早稲田大学大学院
理工学研究科建設工学専攻 修了
/ 主要略歴 /
1996年 NTTファシリティーズ入社
2006年~Arup入社 現在Arupシニア構造エンジニア
/ 主要作品 /
女川町コンテナ仮設住宅(2011) / 由利本荘市文化交流館カダーレ(2012) / NTTコミュニケーションズ東京第6データセンター(2012)