JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS

About JSCA AWARD

第27回

新人賞

竹中大工道具館新館の設計

建物名称 竹中大工道具館新館
所在地 神戸市中央区熊内町7-5-1
建築主 公益財団法人 竹中大工道具館
設計監理 株式会社 竹中工務店
施工 株式会社 竹中工務店
建物規模 建築面積 約540m² 延床面積 約1,900m² 階数 地下2階・地上1階 最高高さ 約7.0m
主要用途 博物館
主要構造 鉄骨造、鉄筋コンクリート造

本建築は、創設30周年を迎える竹中大工道具館の移転・新築で、ものづくり精神を伝承する博物館である。六甲山の麓に残された都市の中の森とも言える敷地環境の中で、樹木の伐採を最小限に抑える建物配置とし、既存の茶室・管理棟と併せて和風屋根が敷地内の緑の中に点在する風景と、六甲山との一体感を意図している。

防火地域において、展示物である「鉄+木の大工道具」と共鳴する和風建築であって、かつ自由度の高い展示空間と南北方向の視線の抜けを確保したいと考えた。そこで、鋼構造によって鉛直部材を感じさせない「繊細な和風建築」を実現するというコンセプトを設計と共有した。屋根を支えるわずかな構造体は、主張することなく建築と同化させることを目指す。和風建築の象徴となる短辺9.9m×長辺27.0m×高さ5.5m という寄棟屋根は、長辺方向に合理的に荷重を伝達することで、耐震要素だけでなく長期部材も短辺に集約し、鉛直部材を感じさせない、屋根が浮いて見える空間とできないかと考えた。

屋根架構では、最も合理的に最少部材で、全体を緩やかにうねる天井木ルーバーと共鳴する「ダブルアーチ架構」を考案した。多目的ホールの象徴的な仕上げである天井木ルーバー越しに控えめにその姿を見せるアーチ架構は、軸力のみで合理的に荷重を伝達することができ、二つのアーチを屋根面内で互いに寄りかからせることで、面外方向の沈み込もうとする力も軸力に変換することができると考えた。具体的には、鋼管250mmφによるアーチ架構と垂木75mm角で構成され、耐震要素であるRC壁300mm厚と長期荷重を支持する鉄骨ムク柱120mmφは短辺に集約している。長辺にはアーチ架構の下弦材のたわみ防止程度に、窓枠に同化した鉄骨ムク柱75mm角を設けている。また、アーチ架構端部には4本の鋼管と鉄骨ムク柱が集中するため、鋳鋼を採用した。

地下では、外周部のRC地下外壁300mm厚を耐震要素とし、長期荷重のみを支持する鉄骨ムク柱180mmφ、鉄骨梁による大スパンとしている。展示空間へといざなう中庭の階段は、緊張感を持たせるためPL-22mmを折り曲げてササラ桁を構築した、木板が浮遊するかのような階段である。建物内部においては、B2階中庭下の杉板本実仕上げのフラットスラブを支持する限りなく繊細な鉄骨ムク柱75mm×90mmによって、緊張感のある空間を実現した。
目に触れるあらゆる部材において繊細さを追求した、鋼構造による新しい和風建築の世界となっている。

増田 寛之

/ 生年月日 /
1976年11月11日(埼玉県生まれ)
/ 出身校 /
早稲田大学大学院
理工学研究科建設工学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2001年 株式会社 竹中工務店 入社
/ 主要作品 /
namBa HIPS / アクティブインターシティ広島(ホテル・ビジネス棟) / 京都文化医療専門学校 / サントリーワールドリサーチセンター / 森本倉庫三宮ビル北館

一覧へ戻る