JSCA賞 受賞者JSCA AWARD WINNERS
第28回
新人賞
G.Itoya
建物名称 | G.Itoya(銀座・伊東屋) |
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所在地 | 東京都中央区銀座 2-7-15 |
建築主 | 株式会社伊東屋 |
設計者 | 大成建設株式会社一級建築士事務所 |
施工会社 | 大成建設株式会社 東京支店 |
建物規模 | 地下2階・地上13階 |
建築面積 | 344.22m² |
延床面積 | 4195.46 m² |
主要用途 | 物販店舗 飲食店 |
主要構造 | 地下 : RC造 地上 : S造 |
本建物は銀座の中央通りに面する文房具専門店「銀座・伊東屋」の建替計画である。旧ビルの象徴であったステンレスのファサードを内部に折り込み,ビルの内側を通じて背面の通りまで貫通させることで,銀座のまちとつながる拡張された「ガレリア(みち)」として再構築した。
銀座のような密集市街地では,敷地を最大限に有効利用した建築計画が重要となる。建物の間口が小さい場合,必然的に1スパンラーメンのペンシルビルや小さな柱断面での計画を求められるケースも少なくない。建物高さ56m,間口8m,奥行き38m,塔状比7の細長の平面形状とスレンダーな立面形状の建物を成立させるため,制振部材により各層に減衰を付加することは有効であるが,特定層に変形が集中し全てのダンパーが有効に働かない可能性があり,ロバスト性を高めることが構造上の課題であった。
短辺方向の架構形式は1スパンラーメン構造に加えて建物中央部に地下階から最上階まで全層を貫通する剛強な「通し壁柱」を配置し,オイルダンパーを用いた制振構造とすることで,大地震時の変形制御及び分散を図りロバスト性を付与した。通し壁柱の剛性は,特定層に単位せん断力を与えて,壁柱柱せいをパラメータとしたスタディを行い,変形や応力が上下層へ分配できるプロポーションに決定した。断面は,ビルドH形鋼BH-2500×400×28×60(1F)とした。通し壁柱脚部は,壁柱への応力集中を緩和するためにゴム支承を設置し水平方向の拘束を緩めた。
制振装置は,内部空間を阻害しない両妻面に設置した。背面の通り(あずま通り)側妻面は1層に1本の水平型オイルダンパーを設置し,中央通り側妻面は端部にオイルダンパーを組み込んだ2層にわたるブレース型オイルダンパー(ブレース軸径,ダンパー径ともにφ267.4mm)を設置した。透明感の高いファサードに溶け込む細径のブレースダンパーにより耐震性を向上させるだけでなく,ファサードデザインとの融合を図った。ブレース端部接合部は,建築主のスケッチを元に製作可能なディテール形状を鉄骨の削り出しにより製作した。
通し壁柱を有効に利用した制振構造とすることで「ロバスト性を有する安全安心なペンシルビル」を実現することができた。
川口 恵
/ 生年月日 /
1984年12月2日(茨城県生まれ)
/ 出身校 /
東京理科大学大学院
理工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2009年 大成建設株式会社 入社
/ 主要作品 /
京葉銀行成田支店 / さいたま新都心コクーン2 / イオンモール広島府中増築