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第28回

業績賞

新宿三井ビルディングの制震改修

所在地 東京都新宿区西新宿二丁目1番1号
建築主 三井不動産株式会社
設計監理 鹿島建設株式会社一級建築士事務所(制震改修)
施工 鹿島建設株式会社東京建築支店
主要用途 事務所、店舗、駐車場
面積 建築面積 : 9,819m² 延床面積 : 179,578m²
階数 地上55階、地下3階
建物高さ 225 m
構造 S造(一部RC造、SRC造)

新宿三井ビルディングは1974年に竣工した地上55階建ての超高層事務所ビルである。構造は鉄骨造で、外周面に箱型鋼管柱を列柱状に配したチューブ架構である。耐震要素は、コア部にRC造のスリット壁(縦にスリットを設けたプレキャスト製の耐震壁)および両側の妻面に鉄骨造ブレースを配している。建設時に大臣認定を取得した高い安全性を有する構造で、現時点でも耐震性能を十分満たしているが、東北太平洋沖地震を受けて、安心感の醸成のため、建物の揺れを可能な限り低減することを目的として制震改修を実施した。

制震改修では、大型のTMD(錘重量300ton)6基を屋上に設置した。このTMDにより、大きな制震効果を狙うだけでなく、建物周期の変動や同調ずれに対する高いロバスト性を確保するため、建物の地上部重量の約2.5%(有効質量の6%強)の錘重量を確保した。

TMDはX,Yの2方向に対して効果を発揮するが、相対的に周期の長い短辺方向については、耐震余裕度の向上を目的として、5~10階のコア内貸室面にW字型のS造ブレースを介して減衰係数切替え型オイルダンパーを計 48台設置した。
TMDは、鋼板による重さ300tonの錘を長さ8.0mのワイヤで支持する懸垂型で、水平オイルダンパーと上下動地震時の錘の浮き上がりを防止する鉛直オイルダンパー及び鉄骨架構より構成される。2m以上の錘のストロークを安定して実現するため抵抗が小さく周期調整が容易なワイヤ懸垂式を採用した。水平オイルダンパーは、±2mストロークを有するとともに、設計想定を上回る大地震時にも錘が許容変位を超えて衝突する事態を回避するために設定速度以上になるとハードニングする特性を有するものを新規に開発し採用した。

制震改修の施工は、入居者が居ながらの状態で実施した。屋上に2基のタワークレーンを設置し、TMDを1基毎組立てた。TMDは支持フレームの上に錘と水平オイルダンパーを配置し、鉄骨架構とワイヤを施工したのちジャッキダウンで錘を懸垂した。
本制震改修は既存超高層建物の耐震性能を大幅に向上させ、入居者の安全・安心感醸成を実現した。屋上TMDによる制震改修は、改修によって眺望が阻害されることや有効床面積が減少することもなく、施工も居ながら工事で居室内工事が最小限のため、既存超高層建物の耐震性向上に非常に有用な技術である。

瀧 正哉

/ 生年月日 /
1967年4月14日 (東京都生まれ)
/ 出身校 /
京都大学大学院 工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
1992年 鹿島建設株式会社 入社
/ 主要作品 /
マルイト札幌ビル / 時事通信ビル / 神奈川工科大学情報学部棟 / プロロジスパーク市川I / 東熱ビル / サンシャインシティオフォス棟制震改修

黒川 泰嗣

/ 生年月日 /
1959年8月15日 (岐阜県生まれ)
/ 出身校 /
横浜国立大学大学院 工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
1984年 鹿島建設株式会社 入社
/ 主要作品 /
あきたスカイドーム / 新宿パークタワー / 秋葉原ダイビル / 新宿フロントタワー / 中野セントラルパークサウス/ 洗足学園シルバーマウンテン/東熱ビル/ サンシャインシティオフィス棟制震改修

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