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第33回

新人賞

福田美術館

建物名称 福田美術館
所在地 京都府京都市右京区芒ノ馬場町3-16,64,51
主要用途 美術館
建築主 合同会社 AYG
設計監理 安田アトリエ
構造設計 有限会社金箱構造設計事務所
施工 戸田建設株式会社
建築面積 692.68m²
延床面積 1,193.58m²
階数 地上2階、地下1階
最高高さ 9.90m
主要構造 RC造・S造

京都嵐山の大堰川に架かる渡月橋のふもとに計画された私設の美術館である。敷地は第2種風致地区に指定されており、建蔽率や建物高さなど多くの建築的な制限があるうえに、下部地盤には埋蔵文化財があるという条件下での計画であった。建物は構造的に分離した2棟の計画で、敷地内で文化財調査済みの北側に美術館棟、大堰川に面した南側に庭園、庭園越しに渡月橋を眺める西側にカフェ棟を配置し、2棟の建物はブリッジで接続している。

2階建ての各階に展示室を有する美術館棟は展示室部分のWRC造を鉄骨造の架構が覆う構造形式であり、水平力のほとんどはWRC造部分で負担している。庭に面した展示室南の縁側の鉄骨部材はガラスファサードのマリオンを兼ね、柱として屋根まで立上り、折れ曲がってそのまま屋根梁となる。鉄骨部材は60×180のフラットバーでガラスの押縁と同様のスリット加工がされ、構造体としての柱という印象が薄まっている。2mの軒の出がある屋根及び下屋は厚さ16mmの鋼板で薄くつくり、水平剛性の確保を担うとともに、下屋部分では鉄骨柱の座屈補剛材ともなっている。WRC造部分は壁厚200~400mmで、階高を抑えるために2階展示室の床はスパン9mを厚さ 250mmの既製PC床版としている。また、2階展示室天井にRCスラブはなく屋根面の鉄骨部材がそのまま仕上げとして現しになっている。展示室上部吹抜けのRC壁の面外変形に対しては、展示ケース上部にRC造水平梁を設けて抵抗している。2階は展示室前の通路部分を除き、縁側やエントランスの上部が吹き抜けとなっている。ガラスファサード部分の面外方向の風圧力には下屋の鋼板屋根を耐風梁として効かせ、面内方向の地震慣性力には展示室前通路のRC片持ちスラブと接続することでRC躯体へ水平力を伝達している。

1階にカフェ、2階に展示室を有するカフェ棟は下部地盤に埋蔵文化財があり表層地盤を支持層としなければならないため、建物を軽量化する目的から鉄骨造で計画している。庭に面した鉄骨架構はフラットバーを用いること、軒を含めた鋼板屋根を用いることは美術館棟と同様で、各方向にバランスよく鉛直ブレースを配置したブレース構造としている。1階スラブが庭の池に張り出したかたちにするため高基礎を採用し、基礎底盤と1階床の間のスペースは機械置場として利用している。美術館棟との接続ブリッジはカフェ棟に属した鉄骨造で、ブリッジの柱と美術館棟の下屋鋼板の干渉する箇所では、鋼板の分割位置を調整して対応している。

岡山 俊介

/ 生年月日 /
1982年(神奈川県生まれ)
/ 出身校 /
東京工業大学大学院
理工学研究科建築学専攻 修了
/ 主要職歴 /
2008年 有限会社金箱構造設計事務所 入社
/ 主要作品 /
キラメッセぬまづ / 敦賀駅前広場 / 真庭市中央図書館改修 / 幌東病院 / Hisao & Hiroko Taki Plaza / 木曽町役場庁舎

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